台所にある電子レンジは、とても便利な道具だ。
ボタンひとつで温め直しができ、火加減を見る必要もない。
忙しい日常の中では、これ以上ない存在だと思う。
それでも、ときどき立ち止まる。
中までちゃんと温まっているだろうか。
急いで済ませたことで、食べ物を雑に扱ってはいないだろうか。
電子レンジが使っている電磁波というものは、仕組みとして理解していても、やはり目に見えない。
磁性鍋は、そんな「見えなさ」を引き受けてくれる道具だと思う。
重さがあり、手に取ると確かな感触がある。
蓋を開ければ、湯気や音、匂いが立ち上がる。
磁性鍋は、電子レンジの中で起きていることを、暮らしの感覚に引き戻してくれる。
電磁波そのものをどうこうする、という話ではない。
ただ、鍋という境界が一つ入ることで、
気持ちが落ち着き、納得して使えるようになる。
目に見えない技術に、目に見える道具を添える。
それだけで、台所の空気は少しやわらぐ。
私にとって磁性鍋は、
電子レンジを安心して使うためのお守りのような存在だ。
効率と丁寧さのあいだに置く、ひとつの区切り。
科学の力を信じながら、感覚も大切にするための道具。
暮らしの道具は、便利であればそれでいいわけではない。
使う人の気持ちが、静かに整うこと。
磁性鍋は、そんな役割を、台所の片隅で果たしている。